Rio+20に関するメモ (2)参加状況のまとめと感想
※本稿は日本政府主催「リオ+20国内準備委員会」の委員として委員会へ報告した内容の転載です。
(1)リオ+20への参加状況
○Youth Blast
子ども・若者メジャーグループの公式サイドイベントとして開催されたのがYouth Blastである。6月7日~8日はポルトガル語で、10日~12日は英語で会議が行われ、述べ1,200名が参加した。このユース会議での主な内容は以下の通り。(1)UNCSDプロセスやRio+20そのものについて全体で学ぶ、(2)Rio+20の交渉内容で特に若者に関係するポイントについて学び、若者としての主張を交渉で通すための戦略を練る、(3)若者のキャパシティビルディング、(4)地域(ヨーロッパ、アジア・太平洋州、アフリカ、南北アメリカ等)ごとの戦略会議、など。
Youth Blastでの日本ユース |
会議は常に熱気で包まれ、Rio+20に若者としてどう貢献できるか、また若者の意見をどのように反映させていくかといった話し合いがいたるところで行われていた。様々な地域の若者がリーダーシップを取っていたが、際立っていたのはヨーロッパの若者だ。彼らは各国内で若者を選出する仕組みがあるばかりではなく、全欧レベルでも若者の会議を普段から行っている。そのため、組織的な活動に慣れており、Youth Blastにおいても中心となって世界中の若者を引っ張っていた。
Youth Blastには世界から述べ2000名が集まった |
またYouth Blastの大きな特徴の一つは、準備会合や本会合の交渉そのものへ影響を与えるための準備期間である点である。6月13日に準備会合が始まって以降も、毎日Youth Blastに参加したメンバーを中心に会議が行われ、話し合った内容を元にロビー活動を展開した。その結果、教育、雇用、将来世代のためのレポートの作成、の3点で交渉文書に若者の意見を反映させることに成功した。
Youth BlastはRio+20へ乗り込む前の戦略会議だった |
会議場でのユースによるアクション |
(2)リオ+20の評価
会議前からリオ+20では大きなことは決まらないのではないかという予測が多く、実際の交渉もその通りになってしまったことはとても残念である。特に以下の二点について私は問題と感じている。
1)テーマ設定の妥当性
グリーン経済はそもそも国際交渉で取り扱うテーマとして適切だったのか。国際社会としての共通認識を作るという意味では一定の成果とも捉えられると思うが、より良い扱い方があったのではないかと感じる。例えば、グリーン経済構築に意欲的な国、地方自治体、企業、NGO等による合同のフォーラムで成功や失敗の事例を共有し、取り組みを促進するための施策を計画したり、ニーズに合わせて主体間のマッチングをしたりするなど、具体的なやることベースで話す方がふさわしいテーマではないかと感じた。今後は交渉や首脳の演説大会以外にも、メジャーグループが本格的に参加するプロセスを正式なプロセスとして認定し、会議の成果とすべきと思う。たしかに現状のサイドイベントも広い意味での会議の成果と位置付けられるかもしれないが、現状では個別ばらばらに自主的に行っているため、全体の成果とは認識しにくい。より統合的に政府とメジャーグループが議論し、具体的な行動に落としていくプロセスを検討しても良いのではないだろうか。
会議中頻繁に開催された日本NGOによるメディアブリーフィング |
2)首脳による実質的な議論の欠如
6月20日~22日の「本会合」期間中に実質的な交渉がまったく行われなかったことは大変残念だった。世界の首脳や大臣が集まる貴重な機会なのだから、少しは実質的な議論が行われるべきではなかったのだろうか。今回はそもそも「閣僚級会合」が設定されておらず、最初から本会合期間中に実質的な話し合いをする予定はなかったといえる。交渉官による交渉では詰め切れない部分を少しでも歩み寄れるかもしれない、大きなチャンスを失ったのではないかと感じている。
しかしながら、一方で評価できる成果もあった。交渉内容では、若者の視点としては、「将来世代のニーズに配慮したレポート」の作成が検討されることが決まった。ただしあくまで「検討する」という表現にとどまっているので、これを確実に実行するようにすること、またその具体的内容や方法は今後検討されるので、形式だけにならないようにしっかりアプローチしていくことが大切である。交渉以外では、全体として交渉プロセスがオープンになってきている点が重要な点として挙げられる。今回はゼロドラフトへ政府以外の主体も意見を出せるようになったことや、会議場内にも比較的アクセスしやすくなってきたことなど、20年前と比べるとかなり進展が見えると、これまで参加してきた方より伺った。また、会議場内でのアクションもほとんどが会議事務局によって認められた。日本でも、この国内準備委員会や顧問団の設置のみならず、NGO連絡会と政府との対話の機会を何度も設定して頂くことができ、リオプロセスに市民がより深く関わることができるようになったと感じる。
(3)リオ+20への参加体験を踏まえて、今後どのように世界の持続可能な開発に向けて取り組むべきか
1)政府・市民の役割分担の明確化
上記でも述べたように、国際交渉の場で行うべきことと、市民と各国政府・機関がパートナーシップを組んで行うことの線引きを明確にし、より効率的に持続可能な発展のための取り組みを進めていくことが大切だと感じる。そのためには政府と市民の間でのより一層の信頼関係の醸成が必要であるし、また、市民側も取り決めを実行していく体制を強化していくことが求められる。
2)若者の活躍の可能性を広げる
今回の機会を通じて、日本の若者が国内、そして国際社会で貢献できる余地はとても大きいと感じた。国・地方ともに政府の財政状況は悪化し、また企業も多くが厳しい経営状況にある中で、若者の力をいかに活かしていくかは、各地域、ひいては国および国際社会の持続可能な発展の可能性を左右するカギになる。そのためには、若者がまず各地域でその地域や国の問題を話し合い、問題解決のために自らできることを考え、実行することを通じ、若者の主体性、自主性、積極性を醸成することが必要である。そのうえで、全国から各地域の代表者的な若者が集まり、大きな方向性について議論し、若者として取るべき行動を決めていく。同時に国際的な課題に対しては、世界に対して働きかけていく。このような動きが若者の内部から出てくることが求められているが、同時に自治体、国、企業もサポートするべきである。アジェンダ21には「自治体、国と若者が定期的に意見交換を行う場の創設」「若者を政策決定の場に含めること」「国連会議へ若者を派遣すること」などが各国政府の取るべき行動として定められている。若者を自立した存在として扱い、各地域で活躍の場を提供していくことで、地域や国の抱える様々な課題もより解決しやすくなるはずである。
NPO法人エコ・リーグのメールマガジン向けに書いたRio+20報告記事は以下からご覧ください。
http://www.facebook.com/notes/%E3%82%A8%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%E5%85%A8%E5%9B%BD%E9%9D%92%E5%B9%B4%E7%92%B0%E5%A2%83%E9%80%A3%E7%9B%9F-japan-youth-ecology-league/rio20%E5%8F%82%E5%8A%A0%E5%A0%B1%E5%91%8A-%E3%82%A8%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%B1%80-%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E5%AE%8F%E5%B8%8C/444643248901898
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