Rio de Janeiro

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2012年9月13日木曜日

感情的対立を超えるための新たな取り組み[e-project / Youth Energy]

e-projectロゴ

去る2012年8月4日、私は有志メンバーと共に「Youth Energy」というイベントを開催しました。

これは、原発に反対か賛成かという二元的な構図で語られがちで、反対派の多いコミュニティーでは賛成という意見は出しにくい現在(当時)の環境はよくないのではないか、という思いから、どのような意見を持っているかを問わず、若者が様々な意見を戦わせ、そのうえで若者の総意に近い意見は何なのか、を考えるというイベントです。

平たく言うと、原発賛成派も反対派も中間派もそろって一堂に会し、お互い思いのたけを述べよう、というものです。

今回は、事前に「パネリスト」という15名の方を募集し(1名事前に欠席になったので、当日は14名)、自らの意見を発信してもらうと同時に、パネリスト間、参加者間での議論を行い、最終的にパネリスト間で若者としての提言を取りまとめるようにしました。

パネリストの方たちは冷静な議論をされ、意見の対立は残ったものの、様々な意見をテーブルの上に並べ、どこまでなら折り合えるかをとことん話し合いました。

原発賛成派、反対派それぞれがネットや独自イベントで一方的にお互いの批判をするだけの場がとても多い中、このような話し合いの機会は大変貴重です。取材に来て頂いたNHKの方は、政府主催の「意見聴取会」などでは怒号が飛び交い、冷静な議論ができない一方で、この若者の議論の場はとても興味深い、と感心されていました。

今回は事前の準備不足、議論にかける時間不足、討議手法の未熟さなどの理由により、意見を一つの方向にまとめることはできませんでしたが、この手法をより洗練させていくことで、エネルギー問題だけでなく様々な問題に応用できるのではないかと思います。

多くの社会問題において、意見の異なる人たちが一堂に集まり、冷静に議論をする場は少ないのではないでしょうか。それではお互いの理解を深めることはできず、良い解決には迎えないのではないかと思います。Youth Energyの手法をよりブラッシュアップさせていき、様々な課題に応用していきたいと思います。

参考URL
Youth EnergyイベントHP:http://www.energyforyouth.org/top/tokyo_0804
e-project HP: http://www.energyforyouth.org/top/
パネリスト一覧:http://www.energyforyouth.org/top/vote

2012年9月4日火曜日

【Rio+20】(2)参加状況のまとめと感想


 Rio+20に関するメモ (2)参加状況のまとめと感想








※本稿は日本政府主催「リオ+20国内準備委員会」の委員として委員会へ報告した内容の転載です。

(1)リオ+20への参加状況

Youth Blast
子ども・若者メジャーグループの公式サイドイベントとして開催されたのがYouth  Blastである。67日~8日はポルトガル語で、10日~12日は英語で会議が行われ、述べ1,200名が参加した。このユース会議での主な内容は以下の通り。(1UNCSDプロセスやRio+20そのものについて全体で学ぶ、(2Rio+20の交渉内容で特に若者に関係するポイントについて学び、若者としての主張を交渉で通すための戦略を練る、(3)若者のキャパシティビルディング、(4)地域(ヨーロッパ、アジア・太平洋州、アフリカ、南北アメリカ等)ごとの戦略会議、など。

Youth Blastでの日本ユース
会議は常に熱気で包まれ、Rio+20に若者としてどう貢献できるか、また若者の意見をどのように反映させていくかといった話し合いがいたるところで行われていた。様々な地域の若者がリーダーシップを取っていたが、際立っていたのはヨーロッパの若者だ。彼らは各国内で若者を選出する仕組みがあるばかりではなく、全欧レベルでも若者の会議を普段から行っている。そのため、組織的な活動に慣れており、Youth Blastにおいても中心となって世界中の若者を引っ張っていた。
Youth Blastには世界から述べ2000名が集まった

またYouth Blastの大きな特徴の一つは、準備会合や本会合の交渉そのものへ影響を与えるための準備期間である点である。613日に準備会合が始まって以降も、毎日Youth Blastに参加したメンバーを中心に会議が行われ、話し合った内容を元にロビー活動を展開した。その結果、教育、雇用、将来世代のためのレポートの作成、の3点で交渉文書に若者の意見を反映させることに成功した。
Youth BlastはRio+20へ乗り込む前の戦略会議だった


会議場でのユースによるアクション
(2)リオ+20の評価

会議前からリオ+20では大きなことは決まらないのではないかという予測が多く、実際の交渉もその通りになってしまったことはとても残念である。特に以下の二点について私は問題と感じている。

1)テーマ設定の妥当性
グリーン経済はそもそも国際交渉で取り扱うテーマとして適切だったのか。国際社会としての共通認識を作るという意味では一定の成果とも捉えられると思うが、より良い扱い方があったのではないかと感じる。例えば、グリーン経済構築に意欲的な国、地方自治体、企業、NGO等による合同のフォーラムで成功や失敗の事例を共有し、取り組みを促進するための施策を計画したり、ニーズに合わせて主体間のマッチングをしたりするなど、具体的なやることベースで話す方がふさわしいテーマではないかと感じた。今後は交渉や首脳の演説大会以外にも、メジャーグループが本格的に参加するプロセスを正式なプロセスとして認定し、会議の成果とすべきと思う。たしかに現状のサイドイベントも広い意味での会議の成果と位置付けられるかもしれないが、現状では個別ばらばらに自主的に行っているため、全体の成果とは認識しにくい。より統合的に政府とメジャーグループが議論し、具体的な行動に落としていくプロセスを検討しても良いのではないだろうか。
会議中頻繁に開催された日本NGOによるメディアブリーフィング

2)首脳による実質的な議論の欠如
620日~22日の「本会合」期間中に実質的な交渉がまったく行われなかったことは大変残念だった。世界の首脳や大臣が集まる貴重な機会なのだから、少しは実質的な議論が行われるべきではなかったのだろうか。今回はそもそも「閣僚級会合」が設定されておらず、最初から本会合期間中に実質的な話し合いをする予定はなかったといえる。交渉官による交渉では詰め切れない部分を少しでも歩み寄れるかもしれない、大きなチャンスを失ったのではないかと感じている。

しかしながら、一方で評価できる成果もあった。交渉内容では、若者の視点としては、「将来世代のニーズに配慮したレポート」の作成が検討されることが決まった。ただしあくまで「検討する」という表現にとどまっているので、これを確実に実行するようにすること、またその具体的内容や方法は今後検討されるので、形式だけにならないようにしっかりアプローチしていくことが大切である。交渉以外では、全体として交渉プロセスがオープンになってきている点が重要な点として挙げられる。今回はゼロドラフトへ政府以外の主体も意見を出せるようになったことや、会議場内にも比較的アクセスしやすくなってきたことなど、20年前と比べるとかなり進展が見えると、これまで参加してきた方より伺った。また、会議場内でのアクションもほとんどが会議事務局によって認められた。日本でも、この国内準備委員会や顧問団の設置のみならず、NGO連絡会と政府との対話の機会を何度も設定して頂くことができ、リオプロセスに市民がより深く関わることができるようになったと感じる。

(3)リオ+20への参加体験を踏まえて、今後どのように世界の持続可能な開発に向けて取り組むべきか

1)政府・市民の役割分担の明確化
上記でも述べたように、国際交渉の場で行うべきことと、市民と各国政府・機関がパートナーシップを組んで行うことの線引きを明確にし、より効率的に持続可能な発展のための取り組みを進めていくことが大切だと感じる。そのためには政府と市民の間でのより一層の信頼関係の醸成が必要であるし、また、市民側も取り決めを実行していく体制を強化していくことが求められる。

2)若者の活躍の可能性を広げる
今回の機会を通じて、日本の若者が国内、そして国際社会で貢献できる余地はとても大きいと感じた。国・地方ともに政府の財政状況は悪化し、また企業も多くが厳しい経営状況にある中で、若者の力をいかに活かしていくかは、各地域、ひいては国および国際社会の持続可能な発展の可能性を左右するカギになる。そのためには、若者がまず各地域でその地域や国の問題を話し合い、問題解決のために自らできることを考え、実行することを通じ、若者の主体性、自主性、積極性を醸成することが必要である。そのうえで、全国から各地域の代表者的な若者が集まり、大きな方向性について議論し、若者として取るべき行動を決めていく。同時に国際的な課題に対しては、世界に対して働きかけていく。このような動きが若者の内部から出てくることが求められているが、同時に自治体、国、企業もサポートするべきである。アジェンダ21には「自治体、国と若者が定期的に意見交換を行う場の創設」「若者を政策決定の場に含めること」「国連会議へ若者を派遣すること」などが各国政府の取るべき行動として定められている。若者を自立した存在として扱い、各地域で活躍の場を提供していくことで、地域や国の抱える様々な課題もより解決しやすくなるはずである。

NPO法人エコ・リーグのメールマガジン向けに書いたRio+20報告記事は以下からご覧ください。
http://www.facebook.com/notes/%E3%82%A8%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%E5%85%A8%E5%9B%BD%E9%9D%92%E5%B9%B4%E7%92%B0%E5%A2%83%E9%80%A3%E7%9B%9F-japan-youth-ecology-league/rio20%E5%8F%82%E5%8A%A0%E5%A0%B1%E5%91%8A-%E3%82%A8%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%B1%80-%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E5%AE%8F%E5%B8%8C/444643248901898

【Rio+20】(1)最終準備会合以降の交渉について


Rio+20に関するメモ (1)最終準備会合以降の交渉について


○経緯
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ある会議の一コマ

13日の段階で合意されていた内容は全体の約2割、15日の段階で4割弱(37%)。ブラジルが16日より議長国に代わる。ブラジルが新たな議長テキストを16日の早い段階で発表するはずが遅れ、午後遅くなってから交渉が再スタートした。ブラジルの新テキストでは、これまで議論してきて合意が取れていなかった部分が大幅に削られていた。17日、18日とハイペースで交渉を行う。ブラジルは合意できない部分はどんどん削っていき、最終的には18日深夜(19日午前2:30)、成果文書案がほぼ固まる。19日、10:30よりPlenaryが開始されるはずがG77のうちの2カ国が実施手段(Means of Implementation)に関する内容が不十分であるということでブラジルと話し合いをした結果2時間遅れで始まり、反対なしということで即時採択された。これは成果文書の仮合意ということであったが、20日~22日の本会合では議論は行われないため、実質的な成果文書の採択と同じ意味があった。ブラジルが議長国に代わって以降、それまでNGO関係者でも傍聴することのできた会議も傍聴できないものが多くなった。特に18日はほとんど非公開の交渉となり、NGOからの参加者としてはどこで何が行われているのかよくわからないまま、成果文書が出てきた印象を受けた。

○子ども・若者グループ(Major Group for Children and Youth: MGCY)に関する部分
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6月15日、最終準備会合の段階で、教育(Education)において、non-formal educationの重要性を訴えるパラグラフを挿入するべくロビー活動をおこなった。この活動が成功し新たにパラグラフとして追加された。

「子ども・若者」グループによるアクション
このアクションが功を奏し提言が受け入れられた
ブラジルの新議長テキストでは、MGCYとして強い関心を寄せてきた「High-level Representative for Sustainable Development and Future Generations(持続可能な開発と未来世代のための上級代表)の設立を検討する」という内容(6月2日付交渉テキストパラグラフ80)が削除されていたため、17日朝から各国交渉官にロビーを行った。

○交渉に関する雑記
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(1)「本会合」と言う名の演説大会

実質的に成果文書内容の議論は18日までで、20日~22日の「本会合」は各国首脳級の政治家による各国5分の演説と4テーマに分かれての「ラウンドテーブル」。ラウンドテーブルも演説が主であり、議論はしない。本会合の間に全く成果文書の内容に触れられなかったのは残念。多少なりとも首脳による議論を期待していた。「本会合」という呼び名がトリッキーですらある。「各国首脳による意見表明期間」とでもすべき。
各国首脳が集まっての総会(演説大会)

(2)「女性」および「子ども・若者」グループによるアクション

「本会合」期間中、女性グループは"reproductive rights"を、子ども若者は"high-level representative for future generations"を盛り込もうと会議場内でアクションしたが、再度交渉が行われることはなかった。交渉内容は全体的に大幅に弱まり、NGOを中心に成果文書は受け入れられないとし、"FUTURE WE DON'T WANT" を掛け声に、交渉再開を訴えるアクションやデモが行われた。